サイト設計を始める方に向けたメッセージ
最後に、川角さんにサイト設計を始める方に向けたメッセージを伺いました。
MTやその他のCMSを使っていて中規模以上のサイト構築を経験されている方は、コンテンツタイプの活用についてはカスタムフィールドをもう少し抽象的に捉えて挑む、程度の力加減でも問題ないと思います。
またCMSはあまり使ったことがない方で、少し難しいと感じた場合は、サイトマップや事業構造図、キックオフから残してある議事録など、サイトオーナーに関わる情報を読み込むと良いかもしれません。
今回は触れていませんが、もう少し踏み込んでワークショップ形式で担当者以外の多様な人から意見を聞くなど、プロジェクトにあわせてアレンジしても良いと思います。
サイトの所有者について解像度があがるほど、納得感のある設計になっていきます。
アーカイブの視点を持つ
ウェブサイトの設計は利用者にとってのわかりやすい情報提供に重きを置くことが多い一方で、CMS本体の構築・運用には、長期間、継続的に価値のあるデータを収集・保存し続けていけるか、というアーカイブ的な視点が必要だと思います。
ウェブサイトを日常的に運用する中で大量のデータが累積していった結果として、思ってもいなかったデータの活用法が生まれる場合もあります。
過去にウェブサイト制作で関わっていたある文化施設では、「スタッフが年度ごとに新しい事業をつくっていく際に、過去のリファレンスとしてCMSの入力フィールドを参考にしている」というフィードバックがありました。
その文化施設のサイトではカレンダー形式のページや館内に設置したデジタルサイネージのために、かなりCMS細かい設計を行っていたので、条件分岐やチケット番号の入力フィールドなどが細かく存在していました。
運用マニュアル代わりに、過去のイベント時のCMS設計の情報が役立っていたという嬉しい話でした。
これはサイトの仕様を把握したうえで、ウェブサイトの裏側の設計についても価値があると判断してGOを出した担当者の力によるものです。
ちなみに、そういった情報の管理、判断をする専門職のことを「アーキビスト」と呼びます 。 アーキビストが関わるプロジェクトはまだまだ少ないですが、一般企業の場合でもそれにあたるようなポジションの方がいると、プロジェクトにおいての「アーカイブ」の方向性が見えてきやすいかもしれません。
「データ」を掛け合わせて意味のある「コンテンツ」にするために
ウェブサイトは受託側がつくるものと思いがちですが、納品相手であるオーナーが持っている、普段目に見えないものを見えるかたちにしていく以上、オーナー側もつくる立場にあります。
その中でも、アーカイブ的な視点の強いプロジェクトになるほど、所属している組織のことと照らし合わせて目利き的な動きのできる、前述した担当者や決済者に力を貸してもらう必要が出てきます。
そのために受託側にもある一定の能力は必要ですが、一方的に設計や実装を頑張るよりも、担当者と併走する状況をつくるのが、結果的に一番いいかたちを引き寄せるのかもしれません。
そのためにも受託側としては、職種に関係なくお客さんの持っている「データ」に興味を持って、それを掛け合わせた結果、利用者にとって意味のある「コンテンツ」になるのはどういった提供方法か、表となるウェブサイトのデザイン・裏のCMS、両面を鑑みてディレクションができる一定のポリシーを持つと、うまく判断していけると思います。
川角さん、ありがとうございました!!